2015年9月20日日曜日

本当の戦争の話をしよう - ティム・オブライエン

本当の戦争の話をしよう - ティム・オブライエン 

村上春樹訳のティム・オブライエン。
村上氏以外の訳本では「カチアートを追跡して」とか「失踪」とかが面白いです。

この本は訳者(訳も好きです)を別としても、小説としてもすごく面白いです。
やっぱりティム・オブライエンの本としては一番好きな本です。

作者はベトナム戦争での従軍経験があります。
いくつもの小説を通して、自身のベトナム戦争での体験を消化しようとしています。
この本ではベトナム戦争の体験が一つの形として完成されます。

戦争行為の自体の成否を問うことに力点が置かれている本ではありません。
また戦争に対する何らかの政治的思想を表明する本でもないと認識しています。

この本では一人の若者が見た戦争を多角的な角度で表現しようと試みています。

それは戦場での臨場感溢れる体験もそうですが、戦争に行く前のことも、本国に残った人々のことも、ベトコンの兵士のことも、士官のことも、兵卒のことも、昔の亡くなった友達のこともいろいろな人がベトナム戦争を通して、書かれています。

そこには絶対的なイデオロギーや判断基準はありません。
連作短編の形式を取り、多角的な視点でベトナム戦争を描いているだけです。

でも、どんな作品よりもこの作品が訴えるある力を強く感じます。

何をそこまでこの作品は訴えるのだろう、何にそこまで惹かれるのだろうと考えると、この作品の根底には強い命への敬意のようなものが流れていることが感じられます。戦争という最も命の価値が落ちる状況でも、作者が抱いた命や人間に対して思う敬意が強く出てきます。

それはラストシーンでの、一見ベトナム戦争に関係しないシーンで最も強く現れます。
それと同時に戦争行為に対する思いも、出ているように思えます。

ベトナム戦争に関する作品は多くあります。
映画や小説問わずして多くの名作が世に出ています。

その数多くの名作の中でも、埋もれることなくこの本は輝いています。

なんだか自動翻訳みたいな文章になってしまったー。

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